ぬるま湯につかりつつ

温室の中から叫び声をあげてみる。役に立つことなんて書かない。

世にも奇妙な物語のような終わり方をしてしまい、恥ずかしい

最近のワイドショーはあの猟奇的JKに釘付けですね。

生徒間でのトラブルだったり家庭環境の悪さだったりと

出来もしない原因究明に躍起になっていてたいへん愛らしいです。

 

今朝、私が見た番組では被害者の父親と加害者の父親の声明文を並べて

「辛いのに手書きだなんて尊敬しちゃう」

「それに比べてこっちはワープロ書き…」

「弁護士に代筆してもらったんじゃないの?」

「この一文は責任逃れ!こっちの一文は心がこもってない!」

と事件に無関係なおじさん、おばさん達が集団ヒステリーを発症しておられました。

 

「精神を病んだ娘を家から追い出し一人暮らしをさせ、

自分は裕福な新婚生活を楽しんでいたあの父親が悪い」

という結論でそろそろ手を打ちたいようです。

加害者の少女の発言は一般人にとってはあまりにも理解しがたいので、

彼女の発言の中から事件の原因を探ることができません。

そこで"家庭の崩壊が歪んだ子供を作る"という

慣れ親しんだ因果論にすがりたくなってしまったのでしょう。

加害者の父親が悪い、という認識を植え付けるために

全く論理的でない批判をこの父親に浴びせなければならない

コメンテーターたちに同情します。

 

精神病の家族を追い出したりだとか配偶者の死後すぐに再婚したりだとか、

それくらいのことは大して珍しい事ではありません。

これよりもっと酷い家庭で生まれ育っても

もしくは家庭なんてものをそもそも知らなくても

猟奇的殺人はせず普通に生活している人が大半のはずです。

 

この事件で注目すべきなのはそんな陳腐な家庭環境ではなく、

やはり少女の発言なのではないでしょうか。

「人を殺してみたかった」

仲の良い友人をこんな理由で惨殺し、少しも反省していないという少女、

彼女自身に焦点を当てるべきでしょう。

 

冷蔵庫に猫の頭を保管したり被害者の腹を裂いたりしていたことで

巷では「こいつモノホンだ…」「マジな奴だ…」となっていますが、

彼女は何らかのパーソナリティ障碍を持っていると思われます。

たぶん、反社会性パーソナリティ障碍。

 

「ご飯食べたい」と同じトーンで「人を殺したい」と感じる。

良心の呵責なんて全く感じずに恨みもない人間を殺せる。

もちろん、反社会性パーソナリティ障碍の方々のほとんどは

それでも人殺しなんてせずに普通に生活しているわけですが、

彼女にはそれができませんでした。

普通の生活ができなかった理由を家庭環境に求めることはできるでしょうが、

では温かみのある素晴らしい家庭だったら彼女は罪を犯さなかったか、

と言われると、そうとは言い切れないと思います。

それが反社会性パーソナリティ障碍というものです。

この障碍を持たない大多数の人々の想像や理解を超えた感覚を持っているのです。

 

人間は理解できないものに怯え、

理解できる範疇まで対象を落とし込もうとします。

そこで今回の事件においては分かりやすく問題行動をとっており、

その行動の理由も推測しやすい父親を悪者にすることしたのでしょう。

この事件を理解可能なすっきりしたものにしようとしているのです。

 

こんなことは何の解決にもならないし、むしろミスリードを引き起こしかねません。

問題の本質的解決には少しも迫ることができません。

 

でも、それでもいいのです。

私たちがこれから生きていくうえで反社会性パーソナリティ障碍の人間に

殺されるなんてことはそうそうないでしょうし、

半年後にはこの事件のこともすっかり忘れているのだから、

分かりやすい形に収めるのが一番いいのです。

今は被害者家族に同情して「加害者は死刑!」「基地外は隔離しろ!」

とビール片手に喚いていればいいのです。

自分の番が来るまでそうやって待っていればいいのです。

そうお思いになりません?

善良でまともな市民のみなさま。